誰かに向かって、
――もっと歴史を勉強しろ。
と、すぐにいってしまう人は――
たぶん――
歴史のことをよくわかっていない人です。
――歴史で悪酔いをしている。
と、いってもよいかもしれません。
……
……
歴史は人々の主観のせめぎあいです。
その内容は――
どんな主観で編まれたかによって様々です。
「もっと歴史を勉強しろ」というのは、
――もっと酒を飲め。
というのに同じです。
たしかに――
誰かの主観に同調し、共感することは――
酒を飲むのにも似た心地よさをもたらします。
が――
酒のことは、ただ飲むだけでは、わかりません。
酒のことをよくわかるには――
味や香を知る――
あるいは――
注がれた杯の形や色によって、いかに趣きが変わるかを知る――
あるいは――
酒の醸造の原理を知り、杯の意匠の技巧を知る――
……
……
歴史を勉強する前に勉強するべきことがあるのです。
それは――
そもそも歴史とはどういうものなのか――その成り立ちです。
いたずらに歴史を勉強してはいけません。
それは――
いたずらに酒杯を重ねるのと同じです。
いつか必ず悪酔いをします。